今後のIT業界に対してコロナウイルスの影響はどう予測されるのか?

新型コロナウイルス拡大により、4月7日政府から緊急事態宣言が出され、企業ではリモートワークを導入する動きが本格化してきました。そんな中、IT業界への転職希望者が急増している、というアンケート結果が注目されています。
「Re就活」のサイト来訪者を対象に4月に実施したアンケートで「転職をする際に魅力を感じる業界」を尋ねたところ、「IT・通信・インターネット」が37.8%で最多となったとのこと。同社の1月のアンケートでは「IT・通信・インターネット」業界は10.1%で、この短期間に3倍以上の希望者増となっています。

「IT・通信・インターネット」業界の希望者が増えた理由としては、
 ・テレワークに適応している業界だから
 ・自分自身のスキルを磨きたい
 ・今後も需要のある業界で成長していきたい
といった緊急事態宣言の中でも働き方を柔軟に変えることができるIT業界に対して、肯定的なイメージが広がっているようです。

また、先のアンケート結果の中で転職の際に魅力を感じる職種について、「ITエンジニア」は1月時点から回答者が増加し、全体の中で2位となっています。ITエンジニアと答えた人からは、テレワークに向いている、という誘因以外にも
 ・手に職をつけたいから
 ・スキルがあれば多様な働き方に対応できそうだから
といった、専門性を身に付けてスキルアップが望める点に魅力を感じた求職者が増えています。

IT業界が転職市場で高い評価を受けている一方で、日本の経済は深刻化していくと誰もが考えていることでしょう。
2020年4-6月期の実質GDPは、前期比年率▲15.3%と発表されました。これは、リーマン・ショック後の2009年1-3月期(同▲17.8%)以来のマイナス成長なのです。7月以降も外出自粛要請の再要請の可能性が懸念されることにより新型コロナウィルスの終息が不透明なため、同じ様な水準になるリスクもあると想定されます。

このように経済状況が不透明でありながらもIT業界への転職が見直されている中で、現在IT企業で活躍しているエンジニアもリモートワークの増加によって今後の将来を考えるべきなのか、再考する時間が増えているでしょう。
そこで、IT業界のエンジニアにとって現在の仕事がコロナショックの影響が少なくなった後はどうなるのか? その様な不安定な環境下で転職した方がいいのか? という不安が湧いてきた際に、どの様に考えたらいいのか一緒に整理していきましょう。

エンジニア業務の現在と今後

まず、エンジニア業務を整理したいと思います。大きく分けると以下3つの業務形態が一般的な働き方になります。

(1) SES(System Engineering service)による各種システム関連業務
(2) 受託開発案件に対するエンジニア業務
(3) 自社製品・サービスの開発保守業務

(1)SES

SESはIT企業のエンジニアがユーザ企業の情報システムの開発保守のために働く、情報システム部のような役割です。決まったエンジニアがアサインされ、ユーザ企業のオフィスに出向いて、時には常駐した上で業務に当たります。そこでは時間管理による準委任契約になるようです。

自粛期間はユーザ企業の勤務形態に応じて働くことになりますので、ユーザ企業の提供するPC,VPNを使ってシステム環境にアクセスし業務を続けることが可能になっていると思われます。しかし、ユーザ企業のオフィスにいる場合に比べてコミュニケーションが少なくなり、ビジネスのスピードも低下していることから、従来通りのSESサービスが提供できているのか証明が難しくなるおそれがあります。

今後SESの契約は準委任による時間契約ではなく、成果を都度求められる業務委託契約に変更していく可能性があります。その様な環境下で、SES業務を担っているエンジニアはこれまでとは異なるスキルを求められるでしょう。

(2)受託開発

受託開発案件は、IT企業がユーザ企業のシステム開発を受託してシステム稼働までの責任をおいます。そこでは請負契約となることが一般的です。複数のエンジニアがプロジェクトメンバーとしてアサインされ、通常は自社オフィス内で開発チームが協業しながら開発作業を進めていきます。

自粛期間は自社の勤務形態に応じて働くことになります。システム開発環境がクラウド利用などリモート環境として整備されていれば、違和感なくリモートワークにて開発作業を進めることになります。リモート環境の整備されていないIT企業ではやむを得ず出勤して業務を行うことになりますが、時差出勤などの非定型勤務形態となり効率は下がってしまいます。
自粛が長期化する場合に備えてリモートワーク環境を早期に用意してBCP対応できるIT企業と、そうでないIT企業の成果に差がでてくることでしょう。

ゆくゆくは開発システムの納期が遅れたり、競争力の低下につながったりというリスクがあります。そこでは関わっているエンジニアの働き方も変えていく必要がありそうです。

(3)自社製品・サービス

自社製品サービスの業務は、自社が提供する製品サービスの維持強化のために開発・運用・保守業務を行います。そこに関わっているエンジニアは役割が明確に決まっています。中期的に自社製品サービスの開発スケジュールが計画され、それにもとづく役割が設計されているからです。自社製品サービスを利用しているお客様との間では、その製品サービスを元にした利用契約となっています。

SES,受託開発案件に比較してエンジニア一人一人の責任範囲が狭いことが多いでしょう。経験の浅いエンジニアもOJTを通じて、リーダーからのレビューを受けながら経験値が深まり、成長することが期待されます。

自粛期間は自社のルールに応じてリモートワークを実施することになりますが、OJTを行いながら経験値を高めているエンジニアにとってはリモートワークでの働き方には工夫が必要です。リーダーへのレビュー依頼方法、コミュニケーション方法がオフィスでの業務とはことなるためです。必要となるスキルも変えていく必要がありそうです。

エンジニア業務はリモートワークであっても比較的働きやすい、コロナショックを比較的受けにくい職種である一方、自身の働き方・スキルを変えていく必要もあることがわかりました。日本経済がマイナス成長になっていく中で、IT業界はどうなっていくのか想定してみましょう。

コロナショックのIT業界への影響

IDC Japanによる「新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した国内ICT市場予測」では、コロナショック後の2020年の国内ICT市場は前年比4.5%減の28兆2,155億円と予測されています。製造業でのサプライチェーンへのインパクト、飲食/宿泊/運輸などのサービス業の低迷とそれに関連する各産業の業績悪化、東京オリンピックの延期など、市場縮小に向けた要素となっています。
先に挙げた日本経済全体のGDPマイナスの17%に比較すれば、IT業界への影響が小さいとIDC Japanは考えているのです。その理由は以下の3つと想定しています。

 ・DX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透
 ・ビジネスに必須となるシステムの定期的な更新
 ・リモートワークによる働き方の確立

これまでオムニチャネル及びDXへの改革を進めるメリットは理解していながらも中々実行に移すことができない企業も、コロナショックにより消費者の購買行動が明らかにオンライン化されてきていることを目の当たりにしました。DXの浸透により、新しいIT業界の市場を開拓していきます。

企業の基幹システムおよびそのインフラについては、ビジネスを支える必須の取組みです。コロナショックにより業績が多少悪化した場合でも現行システムの延命は必要ですし、保守を含めてリスク回避の為に絶対的に必要な投資になります。

そして、前述の通りリモートワークであってもIT業界は働きやすい環境にあることから、コロナショックの影響を受けにくいのだと考えられます。

先のエンジニア業務の区分で言えば受託開発は減少傾向になっていくかもしれませんが、一方でDXやリモートワークを実現するための新しいSESや自社サービスのニーズが増えていくでしょう。

今、転職を考えるべきなのか

IT業界への影響は大きくは無いものの、企業によっては業績が悪化し、給与も多少減額するかもしれません。好景気のタイミングでは売り手市場で優秀なエンジニアは条件の良い企業への転職を考える方も多いはずですが、一方でコロナショック以降に転職を考えるべきなのか、判断すべきポイントがいくつかあるでしょう。

自社の業績悪化、給与減額に応じてすぐに転職すべきか

自社の業績悪化は短期的に悪くなるかもしれません。先の通り受託開発が減っていけば、業績への影響も必然です。中には一律で給与を一部減額するIT企業もあるかもしれません。その時に“転職“を考えるべきなのか? を判断する上で、その業績悪化は短期的なものか、会社がつぶれてしまうような大きなインパクトがあるのかを見極めることが重要です。

リーマンショックの時でも、短期的に経営不振に陥っても持ち直す企業はいくらでもありました。TOSHIBAやNECも停滞していた時期はありますが、数年で増益に向かっています。 何となくの危機感から焦って転職してしまうと転職先の選択も妥協をしてしまうことになり、“こんなはずじゃなかった”と状況が変わったときに後悔する人も多い印象です。

IT業界でのエンジニアの求人は減っていくのか

エンジニアの求人はこの先どうなっていくのか、という点も気になります。
転職ヘッドハンターが多く登録している BIZREACHの新型コロナウイルス感染症拡大の中途採用活動への影響に関するアンケートンケート調査によると、現状転職市場は「危機と捉えている」と思うと回答したヘッドハンターは約80%にもなりました。業績悪化による採用の縮小、オンライン採用プロセスでの対応により鈍化しているといった声が上がっており、危機だと捉えていると感じているようです。
また、中途採用活動が短期的・長期的に今後どうなっていくのかという見立てについては、短期的には「縮小」と答えた方が90%を超えていますが、長期的に見ると「拡大」または「変わらない」と答えた方が過半数を占めていました。短期的には縮小する可能性があるが、長期的には回復し、今と変わらないまたは拡大すると見ているヘッドハンターが多いようです。
その一方で、現状でも採用が活発だと感じるヘッドハンターが最も多かった業種はIT・インターネットでした。IT・インターネットは新型コロナウイルスの影響を受けにくく、むしろ採用を活発化させる企業があるようです。なかでもITエンジニアの職種に対する採用案件がもっとも多いという意見でした。

転職市場全体としては減少傾向にあるものの、IT企業、なかでもITエンジニアの採用意欲はこのような状況下でも下がっていないことがわかりました。

企業のIT投資は、業績悪化に伴い不要不急の投資は控えられるでしょう。システムの入れ替えプロジェクトを2020年に企画していた企業は、保守を1年延長するかもしれません。ビジネスを拡大するために導入検討しているような、新システムのプロジェクトは戦略的なIT投資として見送られるかもしれません。しかし、企業の基幹システムや現行のシステムへの対応は避けられません。IT企業としては、企業のIT投資意欲の回復をみこしてエンジニアを採用育成し続けたいという意志の表れなのでしょう。

今の会社で自分は結果をだせているのか?

最後に、自分は現職にて結果をきちんと出せているのかを振り返ってみます。
今の会社での評価を上げること、自分自身の市場価値を高めることが、結果として転職を成功裏に治めることになります。

転職先からレファレンスチェックを活用する企業が増えているので、現在の職場での活躍が認められていなければ、内定をもらうのも難しいケースが増えています。こうした時代に転職できるのは、リモートワークのような環境でも成果をきちんと出すことができ、チームへ貢献でき、周囲から信頼されるエンジニアです。転職を希望する場合には、自分が新たな職場で求められる人材になることが大切です。今の環境で結果を出すことに最優先で取り組んでください。

今後エンジニアが備えておくべきスキル

コロナショックが段階的に解消したとして、リモートワークは継続的に活用されていきます。2021年には東京オリンピックが開催され、出勤を減らした業務が推奨されるでしょう。さらに、前述の通りリモートワークに魅力を感じIT業界への転職者が増えていく中、リモートワークを前提とした働き方もIT業界では確立されるかもしれません。
そこでは、エンジニアに求められるスキルも変わってきます。オフィスに居て時間管理のもとで業務を行う働き方ではなく、自分の働きやすい時間帯に業務を行い、きちんと成果を出していく、また同僚・上司そして顧客とのコミュニケーションを分かりやすいコミュニケーションスキルが重要になっています。

・自分自身の時間と成果のマネジメント
オフィスでの業務に比較して、リモートワークのメリットは同僚に話しかけられたり、別の業務の割り込みが発生したりという中断が発生しない環境であることです。そのメリットを徹底的に活用しましょう。午前中にこのタスクを終わらせる、金曜日にレビューを受ける準備を終わらせる、といった明確な成果目標を決めておき、それに向けて自分のタスク管理を行う、自身のマネジメントが大切です。

・分かりやすいコミュニケーション
リモートワークになったことで、ZOOM、WebEXなどを使ったWeb会議が圧倒的に増えました。1on1での上長とのレビュー会議、チームミーティング、お客様とのレビュー会議など全てがWeb会議になっている方が多いのではないでしょうか。
ここで重要なことは、自分の伝えたい内容を分かりやすく言語化する、テキスト化する能力です。オフィスでのコミュニケーションであれば、お互いの顔を見て、分かりにくい説明であっても確認をしながら意思疎通が可能ですが、Web会議では言葉だけで相手に理解させる必要がありますので、“結論から伝える”“論点を3つにまとめる”といったロジカルシンキングに基づく分かりやすい説明が求められます。

まとめ

今回はIT業界のエンジニア職がコロナショックによる働き方の改革を通じて転職市場で注目されていることをお伝えしました。
リモートワークが緊急事態宣言による自粛への対応という短期的な対応に留まらず、2021年の東京オリンピックや働き方改革を通じて制度として定着する可能性があります。その際には、エンジニアにはこれまでの働き方とは異なるスキルが必要になることを理解しておきたいです。
既にIT業界で活躍しているエンジニアの方はコロナショックによる経済の悪化によって “今のままでいいのか?”という不安を感じるかもしれませんが、短期的な景気に左右されることなく、まずは自社での成果をきちんと出すことが大切です。
現在のリモートワークを通じてスキルアップを図ることもできます。リモートでも関係者とのコミュニケーションを円滑に行える能力、オフィスに居なくても自身の成果をタイムリーに発揮できる自分自身の時間管理、タスク管理が大切になります。そのようなスキルを身に着けたエンジニアは、転職をする上で優位に立つことが可能でしょう。

本格的なリモートワークの導入に備えて、現在の業務を通じてスキル向上につとめていきましょう。

<外部リンク>
Re就活
IDC Japan
BIZREACH

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