「年収が高いという情報を見てエンジニアになったが、それほど稼げている実感がない」と感じているエンジニアの方もいらっしゃるでしょう。
世間一般的な平均年収は、国税庁の調査から男女・企業規模全てを含めたデータでは約400万円ほどとなっています。対してエンジニアの平均年収は、厚生労働省の調査から20代から40代の平均が500万円ほど (※情報サービス業の平均) という結果になっています。
この比較だけを見ると世間一般の年収よりも高いため「エンジニアの方が稼げる」という見え方にもなりますが、安易にこの比較だけで「エンジニアは稼げる」と思ってしまうのは早合点です。実際に働いているエンジニアの方の話を聞くと、“思っていたほど稼げていない”という声も良く聞こえるというのが実情なのです。
平均年収は高いはずなのになぜ?と思われるでしょう。
ここでは年代別・企業規模別平均年収も提示しながら、
・どうして稼げていないエンジニアも多いのか
・本当に稼げるエンジニアになるにはどうすべきか
・自分の年収はどのくらいが適正かどうすれば知ることができるのか
について解説していきますので読み進めて下さい。
Contents
20代・30代・40代の年代別エンジニアの平均年収
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2019年度)からエンジニアの年収を算出してみます。こちらのデータは「情報サービス業」として公開されているものですが、エンジニア全般の傾向が見えてきます。
<<年代別の年収>>
賃金構造基本統計調査から各年代別の平均給与を算出してみます。
・20~24歳…年収305万円(月収 226,300円)
・24~29歳…年収393万円(月収 262,800円)
・30~34歳…年収479万円(月収 311,200円)
・35~39歳…年収550万円(月収 359,500円)
・40~44歳…年収624万円(月収 399,200円)
・45~49歳…年収659万円(月収 411,700円)
20代前半は見習いのため低賃金ですが、20代後半から一気に年収が上昇していきます。また、40代後半になると伸びが鈍化しているのが見て取れます。
企業規模別にみるエンジニアの年収実態
年代による差をみていただいたところで、企業規模によっても年収に違いがある点について解説させていただきます。上記年代別年収でも参照した賃金構造基本統計調査から、いくつかの年代層で企業規模別の年収を算出してみます。
企業規模が大きいほど年収は高くなる傾向があり、 100名未満の企業と1000名以上の企業の年収は30代前半で120万円弱、40代後半では200万円近い年収の差が出ています。
この年収差は年齢が上がるほど大きくなっており、給与ではなく賞与の差が年収の差に繋がっていると考えられています。
業種別(SES・受託開発・自社開発)にみる年収実態
年代別・企業規模別の年収を確認してみました。続いて、企業の業種別に年収の実態をチェックしてみましょう。 同じ職業でも就労する企業の業種によっても差が出るのはなぜか、その理由もあわせて解説させていただきます。
結論としては、一番年収が高い傾向にあるのは「受託開発」をメインとしている企業のエンジニアです。
受託開発の給料が高い理由
何故、受託開発を行っている企業の方が年収が高くなるのか。その理由は以下に挙げられます。
・元請けが多いためSE(エンジニア)の月単価も高く設定される
・要件定義など上流工程から設計・開発・テストまで一貫して受注している
・大手メーカー・官公庁など大規模かつ優良な企業との繋がりがある
・継続して付き合いがあるためクライアントと信頼関係があり安定した受注を実現
客先となる企業が大手企業で長い付き合いがある、となれば当然業績も安定し社員の給与にも反映されることになります。客先常駐をメインとするSESや、自社開発をメインとしている企業よりも平均して年収が高くなるのはこのためです。
SES・自社開発では受託開発より年収が低くなる理由
SES(客先常駐)は就業する企業と常駐先企業の間で取り交わす契約形態に特徴があります。契約は基本的に「人月単位」の契約となるため、努力や功績が自社の評価に結び付きにくい、またそれによって報酬をあげられるような仕組みのない企業も多くある為、年収が上がりにくいというデメリットになってしまっているのです。
また、WEB系の自社開発は業界平均で見ると年収は高くはありません。自社開発は1つ1つのソフトやシステムがヒットする可能性が低く、また一つが大当たりしたとしても継続してヒットし続けるということはより可能性が低くなります。そのため業績が思うように振るわず、年収も低く抑えられる結果となることが多いため平均年収が低くなっているのです。
20~40代でも年収の高い自社開発企業となると、楽天やDeNAなど大企業への転職を視野に入れる必要があります。
高年収実現には平均値よりも分布をチェックすべき理由がある
平均も詳しく掘り下げて内訳を見ると印象が変わりますが、地域によって平均値にも大きな差が出てしまう実情があります。
上の図は地域による平均年収を示したものですが、わかりやすいのですが最も高い関東のSEの平均年収は476万円、最も低かった四国では392万円と84万円もの違いがあることがわかります。都道府県別になると、東京都は552万円とさらに差をつけています。
企業規模によっても大きく平均値に違いが出てくる部分は先に示した通りです。
さらに一つ平均値よりも分布をチェックしていただきたい理由があります。
それは何かというと、「平均値の中には極めて年収の高い層が全体を引き上げてしまう」という特性があるという事です。
前述の従業員数別の平均値のグラフでは、全体平均はすべて従業員数1000名以上の企業が引き上げており、それ以外の企業の平均は全体平均を割り込んでいるのが実情です。
実例を挙げて解説したように、同じ30代前半の年収も企業規模による条件を追加するだけで100万円以上の差がありました。客先常駐をしている複数の企業に勤める同年代のエンジニア間では、年収の差が数十万円~100万円以上あることも珍しくはありません。
上の図は2017年と多少古いデータですが、IT人材の年代別年収の分布についての経済産業省のデータです。
年代別の最大値から最小値、25~75%が属するのが青色の帯の範囲で表されていますが、その中にある赤いラインが「その年代の平均」とされたラインです。
平均とされる金額を下回る年収のエンジニアの数の方が多く、ごく一部の高年収層が平均値を引き上げているため平均値だけでは目安となる年収比較が難しいという実情がお分かりいただけるのではないでしょうか。
エンジニアは年収の幅が広いため、平均を見て判断してしまうのはデメリットが大きいという結論に至りました。 冒頭部の回答としては、エンジニアは良く見かける平均年収より稼げていないのではなく、年収の幅が広いために平均年収も相応の絞り込みをしないと判断に使えないのです。
現年収の妥当性把握や不満を抱えているならエージェントの有効活用がおすすめ
ご覧になられている中には“年収が低いのではと感じている”という方も多いかもしれません。転職を前に“どのくらいの年収が本当に妥当なのか”を知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
多くの方がこの局面で「平均年収」や「世代別年収」などをチェックされていたと思いますが、条件を付けて掘り下げるごとに大きく数字が動くため参考程度にしかなりません。
あなたが本当に得るべき年収はどのくらいなのかを知るには、第三者の判断を受けるのが一番です。転職市場で自分の市場価値を判断する、転職エージェントに相談して年収トレンドを知る、などをおすすめします。
転職エージェントであれば、今時点の相場感からあなたに見合う年収の目安もわかります。 揺れの大きな平均値はさほど重要ではありません。必要なのは今の自分に見合った市場価値を知ることこそ、あなたの年収の不満の妥当性と、その改善に必要なポイントであるということを覚えておいてください。